主役は中高年に!? 酒井順子さんエッセイ「このとしにして」
写真年賀状の主役が中高年に
いささか古い話で恐縮ですが、今年のお正月にハッとしたのは、「写真年賀状が消えた」ということでした。
友人知人が結婚して子供が生まれるようになってから、ずっと送られ続けてきた、子供の写真がプリントされた年賀状。子を持つ友人のなかには、子持ちの人には写真年賀状を出し、そうでない人には写真なしの年賀状を出すという、細かい芸を使い分ける人もいましたっけ。
私は子供を持たない身ですが、他人の子供達の成長を見たり、親御さんに似てきた様子を確認したりするのが楽しくて、写真年賀状が大好きでした。
が、今年の元旦に届いた年賀状には、それが、一枚もなかったのです。
そういう年頃になったのだな、と私は寂しさを感じたことでした。同じ年頃の友人の子供達は皆、すっかり大きくなって、年賀状に登場しなくなったのです。
年賀状自体が少なくなっている、という事情もあります。
小さな子供を持つ若い知人もいるけれど、そういった人たちは、SNSで新年のメッセージをやりとりするのであり、年賀状を出す習慣を持っていません。
若い親御さんのなかには、「年賀状とはいえ、子供の顔を出すのはちょっと……」と言う人もいます。
子供の顔が世間にさらされないよう、SNSでも子供の顔は隠すといった注意を払っている今時の親御さんは、限られた枚数の年賀状でも、顔出しはまずいと思うらしい。
時代は変わったものよ、と私は昔と比べて薄くなった年賀状の束を見て思ったことでした。
年賀はがきの発行枚数のピークは二〇〇四年で、四十四億五〇〇〇万枚だったのだそう。その後、発行枚数は減少し続け、二〇二六年分は七億五〇〇〇万枚と、約二十年で六分の一になるという激減ぶりなのです。
「昔は、子供の写真を年賀状にプリントしてたんだって」「えっ、ウケる」という日が、遠くない未来に
やってくるのかもしれません。そんなことを考えていたら、一月三日に届いた年賀状のなかに一枚、子供の写真がプリントされたものが混じっていました。
七五三の時の晴れ着の写真が使われた、正統派の写真年賀状だったのであり、「これを待っていた!」と、私はしげしげと眺めた。さらにもう一枚発見したのは、五十代の友人が、自分の姿を写した年賀状でした。趣味のサーフィンをしている画像が、プリントされているのです。
年賀状離れ、そして少子化が続く今、写真年賀状の主役は、子供ではなく中高年になっていくのかもしれません。が、それもまたよし。
中高年が日々を楽しむ姿が写る年賀状の増加を、今後は期待したいところです。
酒井順子さん
1966年、東京都生まれ。高校在学中から雑誌『オリーブ』にコラムを執筆。大学卒業後、広告会社勤務を経て執筆業に専念。2003年刊行の『負け犬の遠吠え』がベストセラーに。近著に『ひのえうまに生まれて─300年の呪いを解く』(新潮社)。
文/酒井順子 イラスト/升ノ内朝子
大人のおしゃれ手帖2026年4月号より抜粋
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