『ボタニスト 植物を愛する少年』ジン・イー監督インタビュー/新疆の小さな村で育った若手監督が語る、故郷の風景と思い
『ボタニスト 植物を愛する少年』
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新疆(しんきょう)ウイグル自治区の広大な草原を舞台に、少年の日常を詩的に綴った映画『ボタニスト 植物を愛する少年』(5月15日より全国順次公開)。少年の目と心を通して映し出される風景は、美しく尊くて、観る者を癒やします。そんな自然の中で生きる少年の成長と、近代化の波のなかで失われゆくものへノスタルジーが心を揺さぶる本作は、50代の女性にもぜひ観てほしい一作です。
主人公は、カザフ族の13歳の少年アルシン。小さな村で祖母と暮らすアルシンは、植物を集めて観察しながら日々を過ごしています。彼にとって植物は、ただの自然ではなく、失踪した伯父が教えてくれた大切な世界観でした。彼の穏やかな日常は、北京から逃れてきた兄とのかかわりや漢民族の少女メイユーとの淡い恋をきっかけに、少しずつ揺らぎ始めます。
監督・脚本を務めたのは、本作が長編映画デビュー作となる新鋭、ジン・イー。キャストには演技経験のない素人俳優たちを起用し、素朴で実直な演技を引き出しました。本作は第75回ベルリン国際映画祭ジェネレーションKplus部門・国際審査員グランプリを受賞したほか、東京、釜山など世界各国の映画祭で高い評価を得ています。中国現代映画を担う若手監督の一人として期待されているジン・イー監督に、オンラインでインタビューを行いました。

都会でやりきれない思いを抱えたとき、故郷の風景に慰められました
――新疆を舞台に植物を愛する少年を主人公にした物語を撮ろうと思ったきっかけは?
ジン・イー監督(以下、ジン・イー):新疆は私の故郷です。小さな農村を出て、都会で学んだり働いたりする生活のなかで、やりきれない思いを抱えたこともありましたが、そんなときには故郷の風景を思い浮かべて自分を慰めていました。それまでは農村の風景が当たり前にあったので特に何も思わなかったのですが、そこから離れて初めて私が少年時代を過ごした環境が貴重なものであったと気付いたのです。農村の風景、ゆるやかな時間の流れ、植物が自分に寄り添ってくれるような感覚、そういった自然と共に生きる生活を描きたいと思いました。

――映画で描かれているのは2010年代前半と思われますが、その頃、ジン・イー監督は20歳前後です。監督自身の個人的な体験や思いを、アルシン少年やその兄に投影されたのでしょうか。
ジン・イー:はい。2015年辺りを描いていて、私は映画の中のお兄さんと同じぐらいの年齢でした。実際、その頃から新疆はかなりのスピードで発展し、新疆の中でもはずれに位置するこの小さな村はその発展の波にさらされながらも伝統的な生活や文化を残していました。私自身が体験した新しいものと古いものが同居している状況を描いています。

構成・文
ライター中山恵子
ライター。2000年頃から映画雑誌やウェブサイトを中心にコラムやインタビュー記事を執筆。好きな作品は、ラブコメ、ラブストーリー系が多い。趣味は、お菓子作り、海水浴。
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