「50歳過ぎからの働き方、あまやかし方」
それぞれの更年期インタビュー
閉経前後で心や体が大きく変化する「更年期」。
英語では更年期を「The change of life」と表現します。
その言葉通り、また新たなステージへ進むこの時期をどう過ごしていったらいいのか—。
聞き手にキュレーターの石田紀佳さんを迎え、
さまざまな女性が歩んだ「それぞれの更年期」のエピソードを伺います。
今回お話を伺ったのは・・・
高橋美賀さん
1972年山形県出身。看護師を経て、雑貨、服飾、飲食業などにつく。新宿四谷に2018年「MOON mica takahashiCOFFEE SALON」をオープン。2025年より「MICA TAKAHASHI」と店名を変え、喫茶とオリジナルアイテムの販売やイベントなどを行っている。MICA TAKAHASHI公式サイト:https://moonmicatakahashi.com/
Instagram: @micatakahashi
40代前半で独立を決意
新宿御苑近くの交差点を見下ろすビル3階のカフェ。
「新宿あたりの月が見えるところでカフェをしたくて、2016年ごろから、ゆっくり探し始めて2017年から本腰を入れました。でも、なかなか見つからなくて、諦めたところでやってきたんですよ。執着していると出てこないって言うけど、本当にそうでしたね」
2018 年6月、髙橋美賀さんが46歳の夏至のころの満月、「MOON mica takahashi COFFEE SALON」をオープンした。
「実は独立を決めた40代前半くらいから、情緒不安定でメソメソしたり、なんでいつも乱れているだ
ろうっていう感じになったんです。当時の常連のお客さんに気功の先生を教えてもらい、それで良くな
りました。今になって思えば、更年期の症状もあったのかもしれないですね」
しかし、当時は独立という「狭い鳥籠からの脱出ゲーム」を決めてやるべきこともたくさんあったので、更年期について思い煩っている場合ではなかった。
「店のイメージスクラップノートを作って、お金も貯めていました」この店のインテリアは自分の店を持とうとするずっと前からコツコツ集めてきたものだった。
「ヨーロッパのアンティークが好きで蚤の市に行っては集めていました。いったいいつ使うのって感じだったんですが、この場所で活かされましたね。この店は私の集大成です」
雑貨店やアパレル、そしてカフェでの勤務経験を積んだ上での、満を持しての独立。狙った経歴ではないが、これまでの経験すべてがこの店に集約されている。
前の仕事を辞めようと悩んだことさえも。
お月様とパリのエスプリ、ペーパードリップコーヒーと特製デザート、白いエプロンでのサーブなど、それらどれもが、美賀さんの「好き」の現実化だった。新しい月の店にはたくさんのお客さんが来てくれた。
普通のカフェから「おひとりさま」カフェへ
ところが、である。営業日時もメニューも多かったため、労働時間が長すぎて疲労が溜まっていった。「空回りしているのかな」と思うようになる。そんなころにコロナ禍の営業自粛。
オープンして一年半が経っていた。
「それを契機に、改めて自分がやりたいコンセプトを見つめ直しました。仕切りはつけなかったけど、テーブルは十分に離して、おひとりさま限定の完全予約制にして、写真撮影はお断りしました。ひと
りの時間を大切にしてもらいたくて」
自分のために淹れられたコーヒーとお菓子をじっくり味わう「あまやかし」の時間がいつも以上に大切だと実感した。美賀さんが言うところの「あまやかし」とは「私そのものを大切にすること」。
甘いおやつを食べることだけではない。コロナ自粛期間が過ぎても、このスタイルを続けた。
「果たして来てくれるのか、といつもドキドキしながらインスタで告知していましたが、一人の時間
を大事にしている方が増えてきたみたいです」
満月や新月にカフェをオープンするなど営業日時を絞ることによってできた時間で、オリジナル商品を開発。その通販もできるようになった。やりたいことをより一層、月の店に結集していった。

「色を見るのは好きでしたが、大人になってから絵を描いたことはなかったんですよ。これからも描きたいですね」
50歳過ぎからの働き方あまやかし方
2022年、美賀さんはnoteに次のように綴った。
「自分にとって本当に必要なものがクリアになって、これからの楽しい妄想もどんどん膨らんでくる。
50歳を目前に、まだまだやりたいことタスクは増えるばかり!」
コロナでリセットした月の店はやりがいがあり過ぎて、「100%ではなくて、1000%!」で働く
毎日を謳歌していた。しかし、ついに2024年の年末年始に疲労とストレスで帯状疱疹を発症。帯
状疱疹が治った後には、蕁麻疹になってしまった。
「あまやかしの時間」を周りに発信しながら、差し出すものが多過ぎて、自分へのあまやかしがおろそかになっていたのかもしれない。当然、50歳を過ぎればこれまでのような働き方はもちろん、あまやかしの仕方も変える必要があるのだろう。そのサインが、定評のある透明感のある白い肌に現れた。
「思えばずっとがむしゃらに働いてきたので、立ち止まるよいきっかけになりました。コロナ以降は自分の好きなやり方で仕事ができて、ちょー楽しかったんですが、帯状疱疹の時は冬眠のように1か月店を休んで、心と体に向き合いました。それが、本気で本音のあまやかし時間の始まりでした」
これまで病気らしい病気をしたことがなく、年を重ねてますます元気になったと自他ともに認めていた。しかし、自称「宇宙人」(笑)の人だって、50年生きれば50歳だ。
帯状疱疹を機に「ちょっとゆっくりしよう、そんなに頑張らないで」と、いわゆる男性的な働き方から
女性的な働き方にシフトした。そして2025年の後半には、約5年間書いてきたnoteを一旦休止。また、カフェのおひとりさま限定完全予約制をゆるくした。
二人連れもOKで、席が空いていれば予約なしで喫茶できるようにも変えた。

最初にハーブティーで体を温めてもらった後、コーヒーなどの飲み物と月ごとのお菓子のセットをサーブする。お菓子はもちろん美賀さんのお手製。
1000%をやめた途端何かがやってくる?
「朝はゆっくりスキンケアの時間を取っています。南側の朝日が当たる小さなテーブルで、手の届くところにいろいろ置いて、お香を焚いて、白湯やコーヒーを飲んでのんびりしてます」
その同じテーブルで、一年前から絵を描きはじめた。
「子どもの頃から、絵の具や色鉛筆の色を見るのが好きでした。デザイナーさんが持っているパントーンとか永遠に見てられますね」
そんな美賀さんが描いたのはまさに色と色が響き合う絵。花園のような夢のような、ふんわり、まあるい、彩りのブーケ。その絵はお香のパッケージやスカーフ、カレンダーになって店の輪郭をやわらかくしている。まるで未来の空気を祝福するかのように。これからの美賀さんはどこに行くのだろうか。
「自分の好きなものに共感してくれる方たちとつながる場所を提供していきたいですね。喫茶だけでなく、オリジナルプロダクトや、旅で見つけたものも紹介したいです」
でもこれまでのような1000%で頑張るということではないらしい。
「ふと気づくとずっとパートナーがいないんですよね。ひとりの時間は大切なんですが、ただひとりで頑張るのではなくて、そろそろ誰かと一緒にいるのもいいなあと思っています」
〜私を支えるもの〜

慌ただしい日々をリセットするのは、昔から旅をすることだそう。

この数年は推しからパワーをもらうために渡韓することもとても増えました」

その晩に、MVやインスタを見て、急に沼落ちしたんだそう。今では「泣いたり笑ったりの感情を全部引き出してくれる」、毎日の暮らしに欠かせない大切な存在になっている。

煙が立つ空間にいると無になれます。瞑想ってできないと思っていたのですが、お香を焚いて過ごす時間がそうかもしれないですね」。
店でも販売している東京香堂と作ったお香は、ただの癒しでなく、上を向いてほしいという願いを込めて調香した。「これからの時代は、イメージしたら現実化がどんどん加速すると思っているので、『imaginer le PARFUM』と名付けました」
Instagramアカウント: @ tokyokodo_ jp
聞き手:石田紀佳さん
手仕事と自然に関わる人の営みを探求するキュレーター。朝日カルチャーセンターなどで季節の手仕事講座を開催。池尻にオープンしたホームワークヴィレッジにて植栽管理。
村の庭ブログ:https://homeworkvillagegarden.blogspot.com/
撮影/白井裕介 聞き手・文/石田紀佳 編集/鈴木香里
※大人のおしゃれ手帖2026年4月号から抜粋
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この記事を書いた人
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