『ボタニスト 植物を愛する少年』ジン・イー監督インタビュー/新疆の小さな村で育った若手監督が語る、故郷の風景と思い
アッバス・キアロスタミ監督の影響を多く受けています
©2025 MONOLOGUE FILMS ALL RIGHTS RESERVED / ReallyLikeFilms
――ところで監督は、高校時代にチャン・イーモウやチェン・カイコーといった中国語圏の巨匠やイランのアッバス・キアロスタミ監督などの作品と出合い、影響を受けたそうですね。
ジン・イー:今挙げてくださったなかでは特にキアロスタミ監督の作品から多くの影響を受けています。特に『風が吹くまま』(1999年)が好きです。イランと新疆は自然の風景が似ていて、人々の習わしも通じたものがあります。
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――メイユーは漢民族の少女ですが、この設定にしたのは、民族問題に対してのメッセージを込めているのでしょうか。
ジン・イー:本作は主にカザフ語で進みますが、現地ではカザフ語だけでなくウイグル語など他の言語も使われているように、異なる民族がそれぞれの文化や習わしを持ちながら生活しています。アルシンとメイユーも異なる民族ですが、対立ではなく、二種類の植物が同じ場所で育っているさまを表現しています。本作に関していえば、政治的な問題を取り入れる意図はなく、純粋に異なる民族の二人の子どもの交流を描きたいと思いました。
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――映画祭やプロモーションでさまざまな国に行かれたと思いますが、特に印象に残っている異国の風景はありますか?
ジン・イー:風景とは違ってしまいますが、東京国際映画祭で上映されたとき、中学生たちが観てくれて、その後に3時間にわたって意見交換をしていた姿です。さまざまな意見や映画に出てきた植物などをボードに書きながら熱心に話し合ってくれていました。
――長編2作目も期待されていますが、今後の予定や目標を教えてください。
ジン・イー:次回作は構想を考えているところで、舞台は再び新疆にするかもしれませんし、他の場所かもしれませんが、内容としては、人の心の動きと、人と人との交わり、それに風景を絡めたものになると思います。

<PROFILE>
ジン・イー(Jing Yi)
1994年、中国・新疆生まれ。北京電影学院卒業。カザフ族をはじめとする多民族文化が共存する新疆地域で育った経験を背景に、辺境性、記憶、民族的アイデンティティ、自然と人間の関係性、時間の流動性といったテーマを繊細に掘り下げる新世代の映画作家。長編デビュー作『ボタニスト 植物を愛する少年』(2025年)が第75回ベルリン国際映画祭ジェネレーションKplus部門でグランプリを受賞。

『ボタニスト 植物を愛する少年』
中国西北部・新疆の草原に暮らすカザフ族の少年アルシンは、植物を観察し記録することで世界と向き合っている。ある日、漢民族の少女メイユーと出会い、彼の静かな日常は少しずつ変化していく。広大な自然を背景に、言葉にならない感情や揺らぐ時間を見つめながら、現実と幻想が交錯する詩的な世界が静かに広がっていく。
監督・脚本:ジン・イー
出演:イェスル・ジャセレフ、レン・ズーハン、ジャレン・ヌルダオレット、サルヘト・エラマザン、ソンハト・ジョマジャン
配給:リアリーライクフィルムズ
2026年5月15日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
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構成・文
ライター中山恵子
ライター。2000年頃から映画雑誌やウェブサイトを中心にコラムやインタビュー記事を執筆。好きな作品は、ラブコメ、ラブストーリー系が多い。趣味は、お菓子作り、海水浴。
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