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大人のおしゃれ手帖 7月号

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大人のおしゃれ手帖
2026年7月号

2026年6月5日(金)発売
特別価格:1720円(税込) 
表紙の人:中谷美紀さん

2026年7月号

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俳優・松本享子さんの更年期「役者休業、結婚、学び直し、そして…」
当時のエピソードを語る

俳優・松本享子さんの更年期「役者休業、結婚、学び直し、そして…」 当時のエピソードを語る

閉経前後で心や体が大きく変化する「更年期」。
英語では更年期を「The change of life」と表現します。
その言葉通り、また新たなステージへ進むこの時期をどう過ごしていったらいいのか—。
聞き手にキュレーターの石田紀佳さんを迎え、さまざまな女性が歩んだ「それぞれの更年期」のエピソードを伺います。

今回お話を伺ったのは・・・
松本享子さん
1973年愛知県出身。短大卒業後に役者に。ドラマ、映画、CMなど、映像作品を中心に活躍。セラピストとしても活動中。


役者を一時休業ホリスティックな道へ

振り返れば役者を目指して社会に出てから、change of life(転機)が何度かあったという松本享子さん。
それらは享子さんの素直な感受性ゆえに引き寄せた出来事でもあり、辛くもあったが、その体験が奥行きのある人間性を育ててきたとも言える。
中でも大きな転機になったのは、2009年享子さん35歳のときの役者業休止だった。

「生理痛も重く、ヘルニアにもなったりして。子どもも欲しかったので、肉体的なリミットを感じて焦っていました」

 役者を辞めて、もともと興味のあった体の仕組みについて本格的に学ぶことにした。スウェディッシュマッサージのスクールに通い、野口整体や温石を学んだ。

「その頃、友だちの家で 1 冊の本に出合ったんです。その本には 『整った意識〈気〉が、心・行動・体を整える』 ということが書いてあって、読んでいくうちに世界や視界が広がって急に心が軽くなったのを覚えています。心と体、思考の関係性に興味を持つきっかけになりました。そこから整体やロミロミの学校にも通いました」
 
もともと好きだった自然の中でのリトリートに参加したり、登山に行ったり、無農薬農業を実践する日々を送る。
リラクゼーションや整体もいつしか仕事となり、自分だけではなく人もケアするようになった。

「体が緩み明るくなりました。解放的になって前向きになっていきましたね」
若い頃から続いた生理痛もなくなり、体調も整っていった。

結婚、学び直し、そして、役者業再開

そんな日々を過ごしながら、40歳になる直前で結婚し、翌年に妊娠。しかし、流産となる。その後、橋本病のような倦怠感に悩まされる。
しかもその頃に、精油販売の講習で勧められた精油の特殊な使い方を、自分の体で試したことで、さらに体調を崩してしまう。

「不妊治療をしながら、体の勉強をやり直しました。体調不良で動けない日も多くて、そんな自分を責めたり、また許したり。今振り返ると何か漠然とした不安がありました。でもその不安を見ないようにして、それがまた自分への嫌悪感につながって、頭がぐるぐるしていました」
 
新しい生き方を模索する日々が続いた。

そんな時、友人からサティッシュ・クマール(東洋と西洋の智慧を統合する思想家・社会活動家)のリトリートに誘われる。そこで体と心はもちろん、何事も大きな視野で捉えることの大切さを知った。

より深く自然と共生するライフスタイルを学ぶためにイギリスの「シューマッハ・カレッジ」の短期コースを受講。日本では、スローで持続可能な人生観を学ぶ「ゆっくり小学校」に入り、焦らずていねいに生きることを学んだ。

一連の学びは、「子どもの頃から漠然と疑問に思っていたことが、徐々に解けていくような体験でした」
 次第に心身の調子が落ち着き、2016年には役者業を再開すべく、芝居の訓練を始めた。

「やっぱりお芝居が大好きで、演じたい気持ちを抑えられなくなったようです」

2018年、本格的に役者業を再開する。享子さんが希望しての再開だったが、これまで緩めてきた心と体にはきつかった。
「外食もお酒の席も増えるし、昭和の体育会系みたいな人間関係が増えて、防御のために心も体もこわばっていきました」

更年期なのかなんなのか……?

心身ともに人生の中で一番の不調が続いた。そして、ある映画を見て、流産のショックが癒えていなかったことに気づく。

「考えてもしょうがないと思って蓋をしていたんですね。内観しているつもりで見たくないものは見ないようにしていただけだった。それに、離婚のことでもずっと自分を責め続けていました。自分を一番苦しめるのは『罪悪感』だと言われますが、その言葉通りでした」
 
これまでよりもジャーナリングを深くするようになり、自分の思いを正直にノートに綴り、思考を見直した。そして時間はかかったが、環境を変えて心機一転、再出発地点に立った。

多くの気づきをくれる更年期は感謝する時間

更年期を通過しようとする今、享子さんの心境は、

「更年期もやっぱり、体だけの問題じゃないですね。 更年期って、今まで女性として生きてきた体に感謝する時間で、心身ともにたくさんの気づきを与えてくれる素敵な時間なのかもって思います。50代になって、肌の質感や体のラインなどが若い頃とはあきらかに違いますよね。ホルモンバランスなど、体の内側の変化を知るきっかけにもなりました。同時に今までこの体は私と一緒に頑張ってくれていたんだなと気づいて、体への感謝が生まれました」
 
年齢にあらがうのではなく、今の自分を楽しむ。体調を整えるためにウォーキングやストレッチなどをマイペースでやる。疲れている時は「今日は休む」と決めて、腎臓を温めて寝る。そして何よりも笑いを大切にしたいと享子さん。

「ご機嫌で今を過ごすこと。そのためには五感に従います。コーヒーの香りや、植物、食べ物、身につける服もそう。心地よいものを五感で見つけたい。一瞬一瞬、心も体も思考も決めつけず変化を楽しみたい。自分と本音で向き合って、周りへの感謝も忘れないように、ほど良きバランスで過ごしたいです」
 
自分自身の人生を歩みながら、役者としてさまざまな人生のワンシーンを演じる享子さん。最近はCMやドラマで母親役をすることが多いという。

「50代になって、若い頃よりも子どもが可愛く感じられて、ああ、やっぱり子どもが欲しかったな……なんて親子連れや赤ちゃんを見るといつも思います。でも、実際の子どもはいないけど、演技とはいえ、いろんな時代のいろんな子の母親を体験させてもらえるのって本当に幸せで、役者をやっていてよかったぁって思います」

「書く瞑想」とも呼ばれるジャーナリングが享子さんの習慣。

「好きなことや日常の些細な感謝、もやもやすることを書いていくと、自分で気づいていなかった本心やありがたさに気づけます」

気の合う役者仲間を自宅に招き芝居の稽古。この日は享子さんが選んだ戯曲のワンシーンを演じた。役者仲間ならではの共感する話題や近況報告で盛り上がり、それがこれからの仕事の活力となるのだそう。

〜私を支えるもの〜

登山やアウトドアで自然に触れる時間を大切にしている。
都会暮らしでも、室内や散歩の道すがらでも季節の変化を感じるが、やはり、大自然から癒やされることは多い。
「ずっと登山をしてきましたが、最近はソロキャンプにハマっています。一人用のテントを持って、キャンプ場に行きます」

「コーヒーを淹れる時間が癒やしの時です。湯気や香りがいいですよね」という享子さんは大のコーヒー党。しかし飲みすぎないようにしている。
「腎臓に負担がかからないように、朝はハーブティーから始めて、動いた後にコーヒーを飲みます」

日々の疲れは、体を芯から温めるサウナドームで癒やす。「母が更年期で不調だったときに買ったものを、実家に帰った時に使ったことがあって。
不調になった時にそのことを思い出して、私も購入しました」。家にいながら気楽に活用できるのもお気に入りポイント。

聞き手:石田紀佳さん
植物文化研究家。旧池尻中学校を活用してつくられた複合施設「HOME/WORK VILLAGE」の植栽や屋上菜園「ART FARMIKEJIRI」を運営。近著に『エコロジカルスキンケア 一人ひとりが小さな生態系』(薫風堂)草木と手仕事 Instagram:@kusaki_to_teshigoto


撮影/白井裕介 聞き手・文/石田紀佳 編集/鈴木香里

※大人のおしゃれ手帖2026年6月号から抜粋
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