【北欧便り】vol.7
グリーンと花に囲まれた暮らし
北欧の国、ノルウェーはオスロから、大人世代に伝えたい暮らしのヒントをレポートする「北欧便り」。
今月は北欧流、植物に囲まれて暮らすアイデアをご紹介します。
夏真っ盛りのノルウェーでは、この時期は一年を通して最も陽の長い時期です。日の出が3時55分、日の入が22時44分。夜になっても外が明るいので、仕事を終え夕食をとり、それからゆっくり外出を楽しむ人が多いのです。またこの時期は、庭やベランダでガーデニングを楽しむ絶好の季節。待ってましたとばかりに植物の種を植えたり、花の世話をしたり、グリーンを家中に置いたりして、手入れに勤しむ人を沢山見かけます。
「庭をレンタルしてガーデニング」という発想!
教師として働くトーリル・エリザベット・ニールセンさんの場合は、ちょっとユニーク。普段は、オスロ市内のマンションに一人暮らしですが、夏の間6〜8月は庭付きのキャビンを借りて住んでいます。「ここに住んでもう3年になります。以前は違うキャビンに3年住んでいたのですが、そこはお風呂がなかったので、こちらが空くまで待ったんです。子供の頃から花や植物に囲まれて育ったせいか、ガーデニングが大好きでね。でも自宅のマンションではできることが限られている。もっと花や植物を世話したいと思っていたある日、オスロ市が庭付きキャビンを貸し出していることを知り、応募したんです」
これは、オスロ市が貸し出している市民農園という制度。トーリルさんが借りている庭は、ソルバング市民農園という区画で、全部で545軒の庭があり、建築家がゾーニング計画を担当した大規模なもの。家賃は、電気代別で1年間4000ノルウェークローネ(約5万円)。オスロ市にはこのような貸し庭が他に9つあります。現在はグリーンブームで、どの市民農園も応募者が殺到し、ウェイティングリストは11年待ちだとか。
実はこの制度は1900年からあり、元々は子供を持つ貧しい人たちを対象に自分たちの食べ物を育てる場所として貸し出したのが始まりでした。今ではすっかりガーデニングができる夏の家として人気になっています。一年を通して住めますが、極寒の冬は水が出ないし、寒いので、通常6〜10月に利用する人がほとんど。オスロ市に住所のある人なら誰でも応募でき、スペインやフランス、中東など国際色豊かな住人がいます。庭いじりをしながら隣近所の人と交流したり、ちょっとした集会所もあるのでグリーン好きな人が集まるコミュニティができています。
育てて愛でる喜びを!
トーリルさんの1日は、朝7時頃起きて、まず庭に出て植物や花を見る。朝食をとってから仕事に行くか、休みの時はそのまま庭仕事。午後は近くの森に散歩に行ったり、友達やお客様が訪ねてきた時は庭を眺めながらお茶。花や植物の写真集を見て勉強したり、さまざまな種を買ってきて「次はどんな花を植えようか」計画を練ったり。グリーンに囲まれて10時には就寝。
「花や植物に水やりしたり、キャビンの壁に蔦をはわせて家の景色を作ったりがとても楽しいですね。育てていく醍醐味も愛でる喜びもある。グリーンは生活の一部なんです」
(左)大きく広がるコンフリー(ヒレハリソウ)は鉢植えでなく、庭植えにしている。長楕円形で垂れ下がったような可憐な花が咲き、ミツバチやマルハナバチが集まる。
(右)ノルウェーの夏の代表的な花、マロウは高さが出るのでサポートしながら育てる。花を摘んで乾燥させハーブティとして楽しむ。
写真、文:古澤恭子
出版社で女性誌編集に携わった後、2010年北欧に移住。現在ノルウェー在住、執筆業を中心にメディアのコーディネーターとしても活動。
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