【大人のための絵本】vol.11
モデル・アンヌさんの名作選
自分にエールを!
言葉にささえられていつの間にか…
こんにちは、アンヌです。
毎日暑い!
なのでクーラーの下でのんびりしながら、考えを巡らせていると、昔が思い出されました。
私が初めて先祖の菩提寺を訪問した20年ほど前のことです。
穏やかで気さくな和尚様にお点前を頂戴しながら世間話をしていました。すると会話の中にこんな一言が。
「人は、すごく気にしていることが強いほど、ある時からそれが全く気にならなくなるものです」。
そういうものなのかととても驚きました。でもこの言葉はずっと耳に残り、何度も思い出しては私の支えとなりました。そんな日が来るといいなと。
当時私には電車に乗る時の困りごとがありました。
お年寄りや体の不自由な人を見かけたら、もちろん席を譲ります。でも、そうするには、いつも少し勇気が必要だったのです。席を立つ前に胸はドキドキ。どのタイミングで声をかけるべきか散々迷って。やっとの思いで席を譲った後には、緊張で頰を赤らめていたのです。
大きなスーツケースやバギーをひとりで持ち上げる人を見かけた時も。車椅子の人がスーパーの上の棚の物を手に取りたそうにしている時も。手を貸すのにどうしても躊躇してしまう。気恥ずかしさが先走っていたのでしょう。当たり前のことをするのだから、あれこれ気にせず自然にできないものかというのが長い間の悩みでした。それでも和尚様の言葉を励みに繰り返していると……。
50を過ぎた今はどうでしょう。考えるより先に席を譲り、荷物の持ち上げを手伝い、棚のものを取って渡している自分がいます。気恥ずかしさも緊張もありません。気にしていたことさえ忘れていました。いつの間にか当たり前にできるようになっています。それに気づいて嬉しくなりました。
生きていると、たくさんの言葉と巡り合います。ひとつでも多く、心に響く素敵な言葉に出会って、自分へのエールとしたいですね。そんな出会いが叶う絵本を、夏の休みのひとときに。
『ぼく モグラ キツネ 馬』
チャーリー・マッケジー 著、川村元気 訳
(飛鳥新社)2,200円
小さなモグラと出会ったぼく。「でもきみがいると世界はでっかくかわる」と言って、対話しながら歩き出します。やがてキツネに出会い、馬が寄り添い……。本当の『家』を見つけるまでの静かで豊かな旅。1ページめくるごとに心に響く言葉に触れ、次第に目には涙が。伸びやかで繊細な筆遣いのデッサンは一言一言に輝きをもたらし、読者の人生にエールを送ってくれます。大人への贈り物にも最適な世界的ベストセラー。
『きみのことがだいすき』
いぬいさえこ 著
(パイインターナショナル)1,320円
小さな動物たちが暮らす森。近づいてみてみましょう。アカネズミ、ホンドタヌキ、ニホンリス、エゾナキウサギといった可愛い動物たちのささやきは、優しさでいっぱい。「かなしいきもちはね、ふたをしなくていいんだよ。」「たくさんまちがえる、きみはすてき。」など。柔らかなタッチの可愛い絵とともに、心をどんどんほぐしてくれる言葉の数々。愛情深い人気の一冊です。
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この記事を書いた人
モデル、絵本ソムリエアンヌ
14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒業。 モデルのほかエッセイやコラムの執筆などで活躍。 最近は地域で絵本の読み聞かせ活動も行っている。
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