【新作映画】
胸に染みる、親子の物語3作

大人のおしゃれ手帖編集部

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娘の幸せを願う職人気質の父、カメラを通して対話をする母と娘、愛ゆえに息子に厳しく接する母。
胸に染みる、親子の物語を紹介します。

『ジェーンとシャルロット』

カメラを通して語り合った母と娘の率直で親密な記録

セルジュ・ゲンズブールのパートナーだったジェーン・バーキンと、ふたりの間に生まれた娘のシャルロット・ゲンズブール。
幼い頃から母との間に気まずさを感じていたというシャルロットがジェーンにカメラを向け、1本のドキュメンタリーを完成させた。
2018年、コンサートのために東京を訪れている母の姿からはじまり、ふたりの会話は母から見るとミステリアスな娘であるシャルロットのことやふたりの関係のこと、やがて自死をした長女、ケイトの思い出へと広がっていく。
「カメラはいわば、ママを見るための口実」だとシャルロットが語るように、フィルターがあるからこそ心の内側の深いところまで触れることができたのだろう。
率直で親密な会話が、母を探求する旅を豊かなものにしている。

監督：シャルロット・ゲンズブール
出演：ジェーン・バーキン

ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開中

『高野豆腐店の春』

ともに豆腐作りに汗を流す父と娘に訪れる新しい季節

尾道、町の人々に愛されている高野豆腐店。
職人気質の父親と気立てのいい娘の春が、毎朝早くから手作りで丁寧に豆腐を仕込んでいる。
心臓の具合がよくないことを知った父は、出戻りである春の再婚相手を探すことを決意。近所の友人たちとともに、計画を実行しようとする。
三原光尋監督と藤竜也が『村の写真集』『しあわせのかおり』に続き、3度目のタッグを組んだ人間ドラマ。
父親が個性豊かな面々と娘のお見合い作戦を立てる姿にクスリとさせられ、豆腐作りの師弟でもある父と娘が互いを思いやる姿にじんわりと胸が温かくなる。
スクリーンに広がるのは、父にもやってきた新しい出会いによって、ほんの少しだけ変わっていく日常の景色。
シンプルで滋味深い豆腐の味に、人生の季節が重なっている。

監督：三原光尋
出演：藤竜也、麻生久美子、中村久美

シネ・リーブル池袋ほかにて全国公開中

〈Netflix〉
『良くも、悪くも、だって母親』

息子の幸せを願い、厳しく接する母愛情の向こう側に見えるものとは？

小さな養豚場を営みながら、ひとり息子のガンホを育てているシングルマザーのヨンスン。
彼女は息子の成功と幸せを願うあまり、常軌を逸するほど厳しく教育してきた。
その甲斐あってガンホは検事になるが、不慮の事故により記憶を失い、７歳の知能に戻ってしまう。
数々のドラマで活躍してきた名女優のラ・ミランと、『ザ・グローリー〜輝かしき復讐〜』で人気俳優となったイ・ドヒョンが共演。
厳しすぎる母によって失われた時代をやり直すかのようなガンホの無邪気な表情が、あまりにも愛らしい。
ヨンスンの息子への厳しさを愛ゆえと見るか、それとも暴走と見るか、価値観を試されるような側面も。
ヨンスンの妊娠中に亡くなったガンホの父親の死の謎や復讐劇も描かれ、韓国ドラマの醍醐味もたっぷり詰まっている。

監督：シム・ナヨン
出演：ラ・ミラン、イ・ドヒョン

Netflixシリーズ「良くも、悪くも、だって母親」独占配信中

選・文／細谷美香

大人のおしゃれ手帖2023年9月号より抜粋
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