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大人のおしゃれ手帖 6月号

大人のおしゃれ手帖

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大人のおしゃれ手帖
2026年6月号

2026年5月7日(木)発売
特別価格:1680円(税込)
表紙の人:吉田羊さん

2026年6月号

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神野三鈴さんエッセイ『ワコウドヨタイケンセヨ』

神野三鈴さんエッセイ『ワコウドヨタイケンセヨ』

「ジェネレーションギャップ」、いつの時代もあった言葉だ。
でも最近は、世代間断絶、老害と、だんだんズレでは済まされない表現が使われている。

世の中の移り変わりのスピードの速さ、幼い頃からの個別の生活空間や環境、情報の多さ……原因は数え切れないほどあるだろう。

年齢を重ねることが負のイメージになり、富を築かなくては価値がないような消費ばかりの社会。そこに焦点を当てて世界を見てみれば、老いることは恐怖しかない、という若者が多いのもわかる気がする。また、これだけルッキズムが幅を利かせているなら尚更だ。

じゃあ、自分の若い頃は? と思い出すと、実はあまり変わらないのではないかと思うのだ。
私は「若さ」がとても煩わしかった。

15歳からアルバイトをしていたせいか、大人のなかで過ごすことが多かった。年齢を聞いた途端に(とくに男性が)何か特別な「付加価値」をつけて私を見るのを感じると、たまらなく居心地が悪かった。

私の個性や人間性ではないことで価値がつけられている居心地の悪さ。そこに私はいない。若さなんて失われることが運命づけられているのに、それを尊ばれても虚しいだけだ。

もちろん人に好かれたい、愛されたい、何か特別な人間になりたいという願望がないわけではなかった。誰かの望んでいる姿、私越しに見ている幻想の私を演じようとしたり、本来の自分にがっかりされて自信が持てなくなったこともあった。

今ならもったいない時間だったと思うけれど、それが異性だけではなく、親や自分に強い影響を持つ大人だったら、愛情故に応えたくなることもあると思う。

そうやって自分らしさを内外限らず「整形」してしまうのは悲しい。

大人になって素敵な年上、年下の人々に出会えたからか、私自身は年齢で隔たりを感じることはないと友人に話したら、「その感覚が危険なのよ! 自分は同じと思っていても、相手はおばちゃん! て困ってるかもよ」と言われてしまった。

ちょっと前に、若いスタッフが、お付き合いの距離感が違う人たちに同じ杓子定規なお礼状を送っていたことを注意したら、「AIで作成しているから、間違いはないはずです」と言われた。
ほう。
ほかにも、「親にも怒られたことがないのでしんどいです。AIは絶対的に肯定して優しい言葉で教えてくれます」と。
ほうほう。
確かにおばちゃん、ここで10ページくらい言い返したいことがあるわ。
幸運なことに芝居の現場では5歳の子役の役者さんも80歳のベテランさんもひとつの作品を作るゴールに向かって仕事をしているので、皆、芝居や人としての佇まいにリスペクトを持って切磋琢磨している。

自分のするべきことをしないといられない場所で、ある意味、対等な世界だ。制作会社や劇団などの組織になるとまた違うかも知れないが。

私は若い役者さんやミュージシャンの友人が多いので、よく時間を共にするが、彼らは貪欲に質問してくる。興味があることに積極的だ。
私は彼らに共感や尊敬、感動して刺激をもらう。優しくて賢くて、共感性が高く、目標に向かって努力を怠らない。その努力を楽しんで、大舞台で伸び伸びと才能を発揮する。
そして、嫉妬よりも他者に対する祝福感覚が強いように感じる。
これがジェネレーションの特性のひとつなら、それは「人間の進化」だと思うのだ。

人間は、失敗を繰り返しながら少しずつ進化して、栄養や環境や知識が整い、早くに才能を開花させ、伸ばしていけるような世代を迎えている。

でも、私たちもまた、新しい時代の新しい老人になるわけだから、若い彼らが「歳を重ねるのも悪くないな」と思うような世代になりたいと思うのだ。

こんなにいろいろなことを感じながら、いっぱい経験しながら頭をぶつけて、なお自分を、人を愛したいと願っている世代ですからね。

AIの専門家がテレビで言っていた話だが、AIに「あなたが望むものは何ですか?」と逆に質問したら、こんな答えが返ってきたそうだ。

「頬を撫でるそよ風、どんな風なのか感じてみたいです。私は〝体験〟がしてみたいのです」
少し胸が締め付けられるような気もする。

万能であるAIができなくて憧れている「体験」が、私たちに残された特権ならば、若者よ、思う存分、失敗すらも、その身で味わってごらんと願うのだ。

年代もバックボーンも違う人たちがこのワンカットにそれぞれの想いを込めて一緒に作っています。
プロフェッショナルな素敵な仲間たち。社会の小さな縮図。だから豊か、だからかけがいがないと思えるのです。

ダイアンキートンにオマージュ。
人類が少しずつ進化しているとするならば、脈々と生きて戦って、その姿を残してくれた先人たちのおかげ。
反面教師も憧れの生き様も。そしていつのまにか人生の先輩と呼ばれる私たちの姿も。

MISUZU KANNO
神奈川県鎌倉市出身。第47回紀伊國屋演劇賞個人賞、第27回読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞。代表作に舞台『メアリー・ステュアート』『組曲虐殺』、映画『37セカンズ』『TOKYOタクシー』、ドラマ『アンチヒーロー』『あんぱん』など。現在Huluにて『時計館の殺人』が独占配信中。映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』が公開中。


text: Misuzu Kanno photograph: Isao Hashinoki[nomadica] styling: Kei Taguchi hair & make-up: Yumi Nara

大人のおしゃれ手帖2026年5月号より抜粋
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