卒業の季節に観たい珠玉の青春映画３選

『ブックスマート　卒業前夜のパーティーデビュー』© 2019 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All Rights Reserved.

この春の卒業式シーズンもそろそろ終わろうとしています。巣立ち、旅立ち、別れ。人生に一区切りがつくこの時期は、喜ばしさにもどこか切なさがつきまといます。そんなエモーショナルな季節に観たい、卒業にまつわる青春映画をピックアップ。多感な年代のみずみずしい感性に満ちた作品は、大人の心の琴線にも触れることでしょう。

ガリ勉女子ふたりが卒業式前夜にハメをはずして得たものは？
『ブックスマート　卒業前夜のパーティーデビュー』（2019年）
母との関係、恋愛、進路、高校生活最後の揺れる一年を描く
『レディ・バード』（2017年）
恋とバンド、青春のきらめきが詰まった音楽映画の傑作
『シング・ストリート　未来へのうた』（2016年）

ガリ勉女子ふたりが卒業式前夜にハメをはずして得たものは？
『ブックスマート　卒業前夜のパーティーデビュー』（2019年）

　親友同士のモリー（ビーニー・フェルドスタイン）とエイミー（ケイトリン・デヴァー）は勉強漬けの高校生活を送った甲斐があり、名門大学への進学が決定。恋愛やパーティに明け暮れる同級生たちをどこかで見下していましたが、彼らも名門大学ほかハイレベルな進路が決定していることが判明し、愕然とします。ふたりは失った時間を取り戻すべく、呼ばれてもいない友人宅での卒業パーティに乗り込みますが……。

　飲酒にドラッグ、恋愛の駆け引き、プールにダイブと、個性的な生徒たちが繰り広げる乱痴気騒ぎの様子は爆笑必至。そんな一夜を経たモリーとエイミーは、クラスメイトたちにもそれぞれ悩みや魅力があるのにそれを見ようとしていなかったことにようやく気付きます。自分の殻を破ること、レッテルを貼らずに人と向き合うこと、そして親友を守ること。大切なことを思い出させてくれる青春コメディです。

『ブックスマート　卒業前夜のパーティーデビュー』

豪華版Blu-ray　￥6,380
通常版Blu-ray 　￥5,280
豪華版DVD　￥5,280
通常版DVD　￥4,180
発売元：ロングライド
販売元：TCエンタテインメント

母との関係、恋愛、進路、高校生活最後の揺れる一年を描く
『レディ・バード』（2017年）

　2002年、カリフォルニア州のサクラメントが舞台。閉塞感のある田舎町のカトリック系高校に通う17歳のクリスティン（シアーシャ・ローナン）は、自分の名前が気に入らず、“レディ・バード”と名乗っています。母は厳しく、何をしても褒めてはくれません。ニューヨークの大学へ進学して都会へ出ることを夢見ていますが、家庭の経済状況からあきらめるしかなさそうです。そんなクリスティンの友情、恋、初めてのセックス、家族との関係がみずみずしく描かれていきます。

　クリスティンを見ていると、17歳の頃ならではの悩みや痛みが心に刺さるような感覚で思い起こされます。同時に、娘を心配するあまりに厳しくしてしまう母の気持ちにもいたく共感できるのです。笑顔を見せない母に反発しながらも甘えたい娘を繊細に表現するシアーシャ・ローナンの演技が秀逸。また、クリスティンの恋の相手役として、人気俳優のルーカス・ヘッジズとティモシー・シャラメも出演しています。

『レディ・バード』

Blu-ray　￥2,075
DVD　￥1,572
発売・販売元：NBCユニバーサル・エンターテイメント

恋とバンド、青春のきらめきが詰まった音楽映画の傑作
『シング・ストリート　未来へのうた』（2016年）

『Once ダブリンの街角で』と『はじまりのうた』に続き、音楽映画の名手、ジョン・カーニー監督が贈る半自伝的映画。舞台は1985年、大不況のダブリン。14歳の少年コナー（フェルディア・ウォルシュ＝ピーロ）は、父が失業したため、荒廃した公立高校への転校を余儀なくされます。両親は不仲で、家庭は崩壊の危機。そんなある日、街で見かけたモデル志望の少女ラフィーナ（ルーシー・ボーイントン）に一目惚れをしたコナーは、「僕のバンドのPVに出ない？」と思わず口走ってしまい、慌てて仲間を集めてバンドを結成することに。憧れのデュラン・デュランなどを参考に、音楽好きな兄のアドバイスを聞きながら猛練習を続け、ラフィーナも加わってビデオも撮影、“学期末ディスコ”で演奏することになりますが……。

　初めてバンドを組む少年たちが友人宅に集まってちょっと音を出してみて、詩を口ずさんでみて、なんとなく曲っぽくなっていく、といった音楽が生まれる瞬間の喜びを丁寧にすくい取っているのが見事。そもそもの目的が音楽ではなく、彼女を口説くため、というのも、青春らしい光景です。とはいえ、彼らの演奏は上達し、オリジナル曲も作り、寄せ集めの服で奇抜なファッションをして、ついには化粧をして登校し、威圧的な校長に激怒されます。そんなコナーたちが学期末ディスコで演奏するシーンは、若者の純粋なエネルギーが爆発しているかのようで圧巻です。