【新作映画】「プロフェッショナルな女たち」が活躍する3作
プレッシャーと向き合う指揮者、新しい場所で厨房に立つシェフ、シングルマザーでもある殺し屋。
プロとして戦う女たちの物語を紹介。
『TAR/ター』
© 2022 FOCUS FEATURES LLC.
傲慢なマエストロを演じ切るケイト・ブランシェットが圧巻
女性として初めてベルリン・フィルの首席指揮者に任命され、作曲家でもあるリディア・ター。
マーラーの交響曲第5番の演奏と録音への重圧を感じるなか、ある疑いによって窮地に追い込まれていく。
ケイト・ブランシェットがピアノと指揮を完璧に習得してマエストロを演じ、アカデミー賞主演女優賞にノミネート。
テクニック面の説得力はもちろんのこと、異論を許さない権力者の振る舞いを圧倒的な演技力で見せ切った。
監督は『イン・ザ・ベッドルーム』などで知られる寡作な映画作家、トッド・フィールド。
最後まで緊張の糸をゆるませることなく、不遜で傲慢な彼女が進む道の果てで奪われたものと残るものとを描き出している。
ターの過敏な神経や悪夢を追体験させながら、抗いがたいダークで魅惑的な世界へと引き込む作品だ。
監督:トッド・フィールド
出演:ケイト・ブランシェット、ノエミ・メルラン、ニーナ・ホス
TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開中
『ウィ、シェフ!』
© Odyssee Pictures – Apollo Films Distribution – France 3 Cinéma -Pictanovo – Elemiah- Charlie Films 2022
人付き合いが苦手なシェフが見つけた温かい居場所
腕は確かだが、人付き合いに関しては不器用な料理人のカティ。
味よりもビジュアルを優先する指示に反発して、スーシェフとして働いていたレストランを飛び出してしまう。
彼女がやっと見つけたのは、フランス語が苦手な移民の少年たちが暮らす自立支援施設の住み込み料理人の仕事。
カティはアシスタントとなった少年たちにエシャロットの切り方を教え、彼らは料理の楽しさを知って瞳を輝かせる。
料理が人と人をつなぎ、ひと皿ごとに未来が形作られていくフランス製ヒューマン・ドラマ。
オーディションによって選ばれた、実際に移民施設で暮らす若者たちが出演。
彼らのフレッシュな存在感と、頑なだった気持ちを少しずつほどき、寛容であることの大切さを知っていくシェフとの交流が心に染みる。
監督:ルイ=ジュリアン・プティ
出演:オドレイ・ラミー、フランソワ・クリュゼ
新宿ピカデリーほかにて全国公開中
〈Netflix〉
『キル・ボクスン』
思春期の娘を育てる殺し屋が挑む最後のミッションの行方は?
ひとり娘を育てるキル・ボクスンの裏の顔は、暗殺請負業者に所属する凄腕の殺し屋。
業界から足を洗おうとしていた矢先、最後にするつもりだったミッションでルールを破り、命を狙われる身になってしまうー。
主演はNetflixのラブコメディ『イルタ・スキャンダル〜恋は特訓コースで〜』で惣菜店を営むシングルマザーを演じ、明るく快活な魅力を振りまいたばかりのチョン・ドヨン。
本作では一転、殺し屋の顔を持ちながら、難しい年頃の娘との関係に悩むシングルマザー役に挑んでいる。
アクションの見どころもたっぷりで、ナイフを使ったスタイリッシュでキレのある動きは惚れ惚れするほど!
痛みを感じさせる韓国ノワールのムードを漂わせながら、守りたい者がいるがゆえの葛藤と、母と娘の愛の物語を描き出している。
監督:ピョン・ソンヒョン
出演:チョン・ドヨン、ソル・ギョング
Netflix映画『キル・ボクスン』独占配信中
選・文/細谷美香
大人のおしゃれ手帖2023年6月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください