【著者インタビュー】本上まなみさん
「うんざりするほど一緒に過ごした」コロナ禍の日々を振り返る
長女の小学校進学を機に、家族で東京から京都に引っ越した本上まなみさん。
京都でステイホームの生活が続く中、夫で編集者の澤田康彦さんと”順ぐり”に書いたエッセイが、一冊の本になりました。
コロナ禍中の京都で綴った家族、夫婦、暮らしと旅と
俳優の本上まなみさんと、編集者の澤田康彦さん。
性格も趣味もまるで違う夫婦による初の共著。
タイトルからは「旅」を想像しますが、奇しくも自由に旅ができなかった日々の、かけがえのない記録となりました。
「家族で京都に引っ越してきて、東京で暮らしていた頃とは生活ががらりと変わったんですよね。でも、京都生活を書くという機会は意外と少なかったんです。夫婦で順ぐり(交互)に書くというスタイルもユニークだと思いましたし、同じ京都から興味深い本をたくさん出版されている『ミシマ社』さんからのお声がけというのもうれしくて。
本来ならもっともっと外に出て、京都の生活を満喫しながら、あちこち見たり聞いたり味わったりしていたはずですが、連載スタートと同時にステイホームの日々が始まったんです。
それで、逆に自分の人生や生活により目が向いて、本としては面白いものになったのではないかなと思っています」
今度こそはスマートに、と理想を描いても、なぜか往々にして「こんなはずでは…」と首を傾げる事態になってしまうのが人生という旅の面白さであり、醍醐味なのかもしれません。
また、ひとつ屋根の下で暮らす夫婦・家族でも、得意・不得意、趣味・嗜好がこうも違うものだなあということが、お二人の視点で互いにじわりじわりとあぶり出されていくのも読みどころ。
ページをめくりながら、ニヤニヤしたり、うんうん頷いたり。
「わりと独立心旺盛な家族、夫婦かな、と思っていますが、夫婦の関係、子どもとの関係性も、こういう状況だからこそちょっと客観視できたような気がします。
いろんな性格の人がひとつ屋根の下に住んでいて、たまたま家族という枠組みに入って一緒にいる、まるでシェアハウスみたいだなって。
だから、お互いに嫌だなと思うことはしないし、でも面白いことは一緒にしたいね、シェアしたいね、と。食べ物で体は作られると言われてますけど、あんなに毎日毎食同じものを食べても、同じ人間にはならないんだ!ということが体感できたのがすごく大きかったように思います。
それに、仕事も生活も、今を大事にしなきゃ、という感覚は強くなりました。
今やりたいこと? もちろん、車に山積みの荷物を詰めて、家族で旅行に行きたいですね」
『一泊なのにこの荷物!』
本上まなみ 澤田康彦
¥1,980(ミシマ社)
俳優の本上まなみさんと、前『暮しの手帖』編集長としても知られる編集者の澤田康彦さん。歳の差18歳、性格も趣味もまるで違う夫婦が「うんざりするほど一緒に過ごした」コロナ禍の日々、改めて知り合うお互いのこと、家族のこと。
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写真/吉村規子 文/高橋マキ
大人のおしゃれ手帖2023年8月号より抜粋
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