「大人のための絵本」vol.14 モデル・アンヌさんの名作選
猫好きのすべての人へ
類が友を呼んだ、秋
こんにちは。アンヌです。
ボジョレー・ヌーヴォ―の季節ですね。好きが高じて通ったワインスクールの類友たちと、久しぶりに集まりたくなりました。
そこで、日取りを決め、レストランを予約。ところが、一人からリスケのお願いが。わけは、飼っている老猫が小康気味で目が離せないのだと。しばらく外出の約束は難しいとのことでした。
ワインと同じくらい猫も好きな私です。とにかく今は寄り添うよう伝え、予約を一旦キャンセルしました。
時間が空いた私は、息子の部活の懇親会に出席。私と同じような10代の男子を持つママの集まりも類友のよう。その日も子育ての悲喜こもごもを分かち合い、たまたま一人とインスタグラムのアカウントを交換することになりました。
投稿を覗いてみると、登場するのはニ匹の可愛い猫ばかり。愛猫家は一目瞭然。子育ての話しかしなかった間柄だったので、少し意外でした。
ママ友から猫談義の仲になると、「大通りの脇でノミまみれの子猫二匹を保護したので、興味があったらぜひ」というメッセージが。
うちはソファーを占領しているアメリカンショートヘア一匹で手一杯です。
ふと、ワイン仲間の老猫はどうなったかしら、と気になりました。もう天国かな。私は類友のよしみに甘え、不謹慎は承知のうえで聞いてみました。子猫を迎え入れる気はないかと。
返信は動画でした。背中は曲がり、色艶を失ったよろよろの長毛種。カメラに振り向き、皺がれた低い声で「ナァーン」と鳴いています。前日までは声も出ず、動けもしなかったのに、自力で窓辺に来るまでに回復したと。
ホッとした私は、里親探しにほかを当たってみることにしました。
3日後。
老猫は19年の人生を終え、「虹の橋を渡った」とのお知らせが。覚悟はしていたけれど、まだワインを飲みに行く気はしないわと言います。長年一緒に暮らした「家族」との別れは辛いに決まってます。いつの日かペットロスを乗り越え、「里親、まだ探してる?」と、明るい連絡がきますように。そして、ワイン仲間とママ友が猫愛で繋がって、類友の輪が広がるといいな。
そんなわけで、今回は猫好きの心に染みる、とらねこの2作をご紹介します。
『なまえのないねこ』
文/竹下文子 絵/町田尚子
(小峰書店 1,650円)
大きな緑色の目で切なそうに見つめる野良のキジトラ。名前はありません。すれ違うほかの猫たちには、みんな名前が。靴屋さんには『レオ』がいて、本屋さんには『げんた』が。お蕎麦屋さんには『つきみ』……。中には二つの名前がある贅沢者も。羨ましいと思っていると、お寺の『じゅげむ』に「自分で名前をつけたら」と提案されます。通りすがりに浴びせられる「へんなねこ」、「あっちいけ!」「しっしっ!」も満足のいく名前にはなりません。悲しくなって雨宿りをしていると、優しい声が。キジトラが求めていたものとは? さまざまな賞を受賞した本作品は、見返しのデザインも洒落ていて、何度も読みかえしたくなります。
『100万回生きたねこ』
作・絵/佐野洋子
(講談社 1,650円)
100万回も死んで、100万回も生きたねこがいました。あるときは王さまのねこであり、またあるときは船のりのねこに。別の人生ではサーカス小屋も経験し、どろぼうについて歩いた暮らしも知っています。ページをめくるごとに、同じねこが生きた個々の物語が展開します。いつでも飼い主に愛され、死んでしまうと泣かれたものです。でも、ねこは一度も泣いたことはありません。やっとのらねこの自由を手に入れると自分が大好きに。そして素敵な白いねこと出会い……。とらねこの中にたくさんの感情が芽生え、読み手は人生の意味を深々と考えさせられます。佐野洋子さんによる心揺さぶられる名作です。
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この記事を書いた人
モデル、絵本ソムリエアンヌ
14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒業。 モデルのほかエッセイやコラムの執筆などで活躍。 最近は地域で絵本の読み聞かせ活動も行っている。
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