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2025年1月号

2024年12月6日(金)発売
特別価格:1420円(税込)
表紙の人:原田知世さん

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【北欧便り vol.11】家族で過ごすクリスマス

古澤恭子

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北欧の国、ノルウェーはオスロから、大人世代に伝えたい暮らしのヒントをレポートする北欧便り。
今回は「クリスマス」。
ノルウェーでは12月に入ったらクリスマス用のクッキーを焼いたり、家の飾り付けを始めたりします。正確にいうとクリスマス24日前から準備を始め、クリスマス当日は家族と過ごします。日本の賑やかなクリスマスとは違い、「家族や子どもたちのための日」といっても過言ではありません。
税務管理課長として働くマリ・オブレボさん(50歳)に伝統的なノルウェーのクリスマスについてお話を聞きました。

手作り感を大切にした「家の飾りつけ」

クリスマスのデコレーションは家の外と内と両方します。最近では庭に電飾イルミネーションを飾ったりする家庭もありますが、玄関の扉にはリースを飾るのが一般的。ハート型、God jul(メリークリスマス)と文字が刺しゅうされたタぺストリー、お花で作ったブーケ状のものなど、さまざまなタイプのリースがあります。これならマンション住まいの人も気軽にクリスマス気分を味わえ、片付けも簡単です。
「家の中にはアドベントカレンダーを飾ります。12月1日から毎朝一つずつカレンダーについている小さな箱を開けていくんです。中には小さなプレゼントが入っているんですよ。これが子どもにとっても大人にとっても楽しいアクティビティなんです」。
クリスマスまで指折り数えて待つ楽しみが、アドベントカレンダーにはギュッと詰まっているのです。
「クリスマスツリーは、プラスティック製ではなく本物の木のトウヒ(エゾマツ)を使います。オーナメントは先祖代々使ってきたものや自分たちで新しく追加したもの、そして子どもたちが作った飾りを一緒に吊るすんです。子どもたちが作った飾りは見た目は綺麗じゃないかもしれません(笑)。でも手作り感のあるものをデコレーションする、子どもたちも飾り付けに参加することに意味があるのです」

クリスマスカラーのリボンが可愛いハート型のリースを、玄関の扉に飾って準備開始。自然素材である木を使った素朴なリースはノルウェーっぽい。

24個の小さな箱がついたアドベントカレンダー。中には小さなプレゼントやチョコレートが入っている。窓辺には、北欧の妖精やニッセンと呼ばれるサンタの人形、キャンドルを飾ってクリスマス気分を演出。

クリスマスツリーは北半球の寒い土地に分布する常緑針葉樹を使う。室内には自然の木の香りが充満してまるで森にいるよう。

子どもたちも幼稚園などで手作りした飾り(輪っか)をツリーに吊るして、デコレーションを楽しむ。

お菓子作りを楽しむ

この時期、家の飾り付けと同じくらい大切なアクティビティが、クリスマス用のクッキー・ジンジャークッキー作りです。サンタルチア祭が行われる頃(12月13日)に焼き始め、色とりどりの伝統的なクッキーの缶に保管しておきます。
 ノルウェーの伝統では、定番のジンジャークッキーのほかにクリスマス用の7 種類のクッキーというのがあります。7種類のクッキーというのは、油で揚げたもの(日本でいうとドーナツのようなもの)、鉄で焼いたもの(薄い平べったい鉄製の入れ物に流し込んで焼く)、オーブンで焼いたものから成ります。昔は7種類用意していた家庭も多かったようですが、現在はそのうちから自分たちが好きなタイプだけを作るか、市販のものを買う人が多いようです。

マリさんの娘、パートナーの娘が一緒になってクッキー作り。サンタクロース、トナカイ、ハート、家などいろいろな型取りをしてオーブンで焼いていく。

クリスマスの定番、ジンジャークッキー。最近ではスーパーやカフェなどでもバラエティ豊かなものが買え、家で楽しむ人が多い。旅のお土産にもおすすめ。

7種類のクッキーの中で人気の「ベルリンの花輪」(左奥)、「シロップスニップル」(右奥)、「クルムカーケ」(手前)。

森とジンジャーの香りに癒やされて

「本物の木を使って飾り付けしたクリスマスツリーとジンジャークッキー。これがノルウェーのクリスマスの象徴でしょうか。森を彷彿とさせる自然の木の香り、そこに焼きたてのジンジャークッキーの香ばしい匂いが立ち込めて、この時期、家の中にいるだけで、なんともいえない幸せな気分になるんです」

ノルウェーではクリスマスのメインは、25日より24日。
「イヴの日に教会に行って、その後両親の家に集まり、ご馳走であるクリスマスディナーを食べ、プレゼントを開けて家族で過ごすというのが一般的ですね。クリスマスは完全なプライベートイベントです」
ちなみに24日夜は、街へ出ても商業施設やレストランなどはどこもお休みで閑散としています。通りには人っこひとりいません。

マリさん宅のクリスマスの食卓。青と白のコントラストが美しいデンマークの陶器のお皿でデコレーション。

「オスロがまだクリスチャニアという名前で呼ばれていた時代(1924年以前)、クリスマス時期は「冬のパーティ」という意味合いが濃かったと思います。暗く寒いこの地で冬を乗り越えるのは人々にとってとても困難なことでした。特に11月はね。だから冬の楽しみの一つとして人々が集まってクッキーを焼いたり、お喋りしたりするアクティビティみたいな形で発展したといわれているんですよ」
クリスマスの準備は、過酷な気候を生き抜く先人たちの知恵の一つであったのかもしれませんね。

photo:Mari Ovrebo


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古澤恭子

出版社で女性誌編集に携わった後、2010年北欧に移住。現在ノルウェー在住、執筆業を中心にメディアのコーディネーターとしても活動。

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