「大人のための絵本」vol.17 モデル・アンヌさんの名作選
編み物がしたくなったら
毛糸の温もりを
こんにちは。アンヌです。
立春を過ぎたとはいえ、やっぱり寒い!
そこで、私は20 年以上前に編んだ毛糸のストールを出しました。幅50 センチほどのベージュ色。カシミヤの温かみに一目惚れした毛糸玉で、ガーター編みで編んだものです。慣れない作業で目は荒く、不器用な出来栄えでした。
でも気にせず仕事現場に纏って行くと、カメラマンやスタイリストの方々に手作り感を褒められました。
その帰り、嬉しくて友人が営む小さなワインバーに立ち寄ると。
自分も編み物が好きだから、「アンヌのストールに合う帽子を編んであげる」と言うのです。あまり本気にせず、気持ちだけで十分と伝えてその日は家に。
ところが翌日、また仕事帰りに寄ってみると、「はい、これ」。
手渡されたのはなんと可愛いニット帽です。ストールと同じベージュ色。非常に凝った編み方のポンポン付きです。しかも、たった一晩で仕上げたという速さ! びっくりしてお礼もすぐ出てこない私に、これぐらい朝飯前といった表情。
思えば、彼女は、驚くほどの器用さと柔軟性を兼ね備えた人でした。
出会った当時は、契約社員として働いては旅に出る、というのを繰り返していました。現地の言語を即ものにして、あっという間に友人をつくってしまう。その後、ワインバーを任されれば、即お店を回せるように。どんどん増える常連客。見事な転身ぶりだなと眺めていると、突然ヨーロッパで暮らすことになったと言うのです。夫となる人について行くと。そしてすぐに新しい土地になじみ、赤ちゃんが生まれると、今度はミシンで子ども服を次々と。子どもが少し大きくなった頃には、ビシネスを始めていました。何をするにも難なくこなし、常に楽しそうなのです。
そういえば、あのニット帽はどこへしまったのだろう。
必要に応じて、セーターになったり、手袋になったりする毛糸。なりゆきに身を委ねながら柔軟に適応して、人生を確実に自分のものにしている彼女のようだな、と思いながら。
ということで今回は、毛糸のお話2選。心身ともに温まって!
*次ページでは、アンヌさんのおすすめの2冊をご紹介します
この記事を書いた人
モデル、絵本ソムリエアンヌ
14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒業。 モデルのほかエッセイやコラムの執筆などで活躍。 最近は地域で絵本の読み聞かせ活動も行っている。