松之助オーナー・平野顕子さんの N.Y.からおすそ分け vol.12
ニューヨークの暮らしで感じる“ユーモア”センス
アメリカのユーモアは、人も街も、日本人では思いつかないようなものがたくさんあります。
街を歩くだけで、「これ、何??」と思わず笑い転げてしまうようなものも。
アメリカに渡った留学時代から今日に至るまで、アメリカ独特のユーモアに救われたり、慰められたりもしました。
もともと「なるようになる!」と思って行動するタイプなのですが、シリアスな状況になればなるほどジョークを連発するアメリカ人の感覚がわかりませんでした。
ユーモアと一口に言っても多種多様ですが、特色のひとつと言えるのが、緊張をほぐす目的や困難な状況に陥ったときにジョークを言うアメリカ人が多いことでしょう。
不安や心配なことが起きたときにジョークを言って緊張を和らげようとする習慣は、日本ではないように思います。
ニューヨークでの生活が長くなるにつれて、状況を和ませる笑いの重要性がわかってきたんです。
深刻な状況で眉根をひそめていても、負の連鎖が進むばかりで状態が改善しないことの方が多いのですよね。
どうせなら泣くよりも笑い飛ばす方が、心にゆとりが生まれて、思いがけない解決策が見えてくる気がします。
現に私もこんな風にして生きてきましたし。
笑いには人生の流れを好転させてくれる効能や効果がある、というエッセイを読んだことがあります。
ひょっとすると笑いは、強運を引き寄せるための最高の薬なのかもしれません。
気がつけば、アメリカ人特有の楽観的なフロンティア精神がすっかり身についていました。
そして、いつの頃からか、ユーモアの種を見つけては写真におさめることが習慣になっています。
皆さんにも共有しますね!
これは釣りに行く途中で見つけた立て看板。
「OYSTERS」って書いてあるけれど……
矢印の方に向かってみたら、無人スタンドを発見!
牡蠣の無人販売ワゴンがありました!
冷蔵庫の中に釣り人が採った牡蠣が入っているようなのですが……
体調を左右するかも、と思うと、ここで買うことに躊躇しちゃいます。
私はここからの人生、いかに毎日を楽しく、穏やかに過ごしていけるかがテーマです。
60代後半にひと回り以上年下の旦那さまと再婚しましたが、彼もなかなか茶目っ気のある人。
いつもは真面目なのに、ふとした瞬間、真顔でおかしなことをして笑わせたり、家族で集まると義父と弟と3人で子どものようにおふざけしたり、たわいもない話で大笑いしたりします。
こんな中にいると本当に幸せだなぁ、とつくづく思います。
文化の違いも見方や受け取り方を変えれば、楽しみになります。
まだまだ混沌とした日々の中にあるとはいえ、塞ぎ込んでばかりいるのももったいないと思うんですよね。
限られた時間の中で、まだまだやりたいことをやって、楽しまなくっちゃ!
だから私は、日々の小さな笑いやユーモアを拾い集めて、家族みんなで笑顔でいられる時間をたくさん共有しつつ、大切に積み重ねていきたいと切に思います。
今年もあと1か月を切りました。
私は毎年この時期は日本でのクリスマスとお正月を迎えます。
年に1度のこの時期に、娘や息子、孫たちと会えるのが楽しみで仕方がありません。
少し早いですが、皆さまも家族や大切な人と楽しい時間を過ごしてくださいね。
そして、2023年も健康で笑いの絶えない1年になりますよう、お祈りしています。
平野顕子
料理研究家、スイーツ店「松之助」オーナー
京都の能装束織元の家に生まれる。47歳でアメリカ・東コネチカット州立大学に留学。17世紀から伝わるアメリカ・ニューイングランド地方の伝統的なお菓子作りを学び、帰国後、京都・高倉御池に「Café & Pantry 松之助」、東京・代官山に「MATSUNOSUKE N.Y.」と、アップルパイとアメリカンベーキングの専門店をオープン。京都と東京にはお菓子教室を開校。2010年、京都・西陣にパンケーキハウス「カフェ・ラインベック」をオープン。著書に『アメリカンスタイルのアップルパイ・バイブル』(河出書房新社)、『「松之助」オーナー・平野顕子のやってみはったら! 60歳からのサードライフ』(主婦と生活社)など多数。プライベートではひとまわり以上年下のイーゴさんと再婚し、サードライフを過ごす。
text/Emiko Yashiro(atrio)
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