【大沢たかおさん】「大人になりきれない人が多い日本で大切なのは、孤独を恐れすぎないこと」/Amazonオーディブル『走ることについて語るときに僕の語ること』インタビュー
村上春樹さんが教えてくれた“いくつになっても懸命に生きること”
今作は村上春樹さんが58歳の時に出版され、50代後半に差し掛かった心境も語っています。
「確かに歳を重ねていくことについての思いも、このエッセイのテーマの一つです。村上さんは後悔しないように懸命に生きていて、命というものに対して突き詰めて考えている人だと思いました。歳を重ねる上で不安になること、懸命に生きる大切さ、時間を無駄にしないこと。当たり前のようでいて通り過ぎてしまうことを、村上さんが素晴らしい文章で語ってくれて、改めて自分も懸命に生きようと思わせてくれます」
書くためには体力をつけないといけない。だから走ると決めて、走り続けている。そんな村上さんの姿も印象に残ります。
「僕はその部分に一番共感しましたね。こと僕の仕事に関しては、体力命で、体力がない人は絶対できないですから。病気したらできないですし、健康でないと演技はできません。演技は、不健康な状態でやると限界があるんですよね。不健康な体で考えても、不健康なアイデアしか出てこないから、不健康な表現になってしまう。演劇は人をハッピーにさせる仕事なので、健康な体でいないといけないし、体力勝負なんです。なので、作品のクランクイン前に体力が持つかを考えます。例えば、『キングダム』シリーズは4年くらいやっていますが、王騎という役の体重をどう維持して、何年間やっていけばいいのか。『沈黙の艦隊』という作品では、2ヶ月間、同じ場所に立ち続けないといけない。どうやったら朝から晩までやって、集中力を保てるかな、と。でも、結論的にはどの作品のどの役も体力がないとできないことなので、その前になるべく体力作りをしたいし、栄養もちゃんと取っておこうと意識する。そういうところは、作家の先生も一緒なんだなって思いました」
走り続けている村上さんのように、大沢さんがずっとやり続けていること、継続していることも聞いてみると、意外な回答が。
「プライベートでは全くなくて(笑)。20代、30代と40代と今、ステージが変わるごとに興味を持つことも変わってきています。日本人っぽいけど、仕事を一生懸命やったぐらいかな。でも、それは今の時代に合ってないというか、良くないと思うんですけどね。後輩に相談される時はいつも『絶対俺の真似しない方がいいよ』って話しています(笑)。『仕事は仕事だから、ちゃんと自分の時間を持って遊びなさい』と。でも、僕は仕事に一生懸命になりすぎたかもしれないけれど、それはそれでよかったなと思うことはありますね」
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