【インタビュー】マインドフルネスを通して
「本当のやさしさ」に今一度向き合った今
閉経前後で心や体が大きく変化する「更年期」。
英語では更年期を「The change of life」と表現します。
その言葉通り、また新たなステージへ進むこの時期をどう過ごしていったらいいのか――。
誌面連載「それぞれの更年期」では、聞き手にキュレーターの石田紀佳さんを迎え、
さまざまな女性が歩んだ「それぞれの更年期」のエピソードを伺います。
お話を伺ったのは・・・
神田恵実さん
0931975年生まれ。ファッションショーの企画、編集者を経て、2005年、オーガニックブランド「nanadecor(ナナデェコール)」を展開。2021年より、食の未来や地方創生、女性の生き方支援を包括した、分散型自律コミュニティ「My Organic Labo」をスタートした。
ナナデェコール公式サイト
本当のやさしさって何だろう?
マインドフルネスな生き方と睡眠をテーマにしたオーガニックコットンブランド「nanadecor(ナナデェコール)」ディレクターの神田恵実さん。
30代前半で当ブランドを立ち上げて以来、公私ともに「やさしい社会」を目指してきた。
けれどもそんな恵実さんが、最近になって、「本当の意味でのやさしさとは?」と、その難しさと奥深さに気付いたという。
「自分の仕事は睡眠を通して女性の元気を応援すること。だけど、それが押し売りになっていなかったか? より深いやさしさとは何かを探究し始めました」
年齢を重ね、以前よりも疲れやすくなってきたというのも、ほかの人や自分へのいたわりを考え直すきっかけになっているようだ。
「これまでの社会経験で人の価値観は多様だと知っていたはずでしたが、自分はわりと体力があって仕事も器用にこなせるタイプだったので、ナナデェコールはもう少し本質的な視点でやさしくあるべきではないか? 前に進むことだけがすべてではないときもありますし、それぞれのペースがありますよね」
例えば、体調が悪くてイライラしている自分に対して、これではいけないと自己嫌悪をしたり、ただただ鼓舞するのではなくて、 「がんばらずに寝ていいよ、と言えたらいいですよね。友だちにはそう言えても、自分には言えない人が多いんじゃないかと思って」
恵実さんのいう「本当のやさしさ」とは、まずは自分の心の声を聞くこと。
「コップから水があふれるように、自分の中も豊かさで満たされていないと、かけがえのない人たちに、心からのやさしさを差し出せないと思うんです」
明治神宮前の喧騒から離れた静かな住宅街にある「ナナデェコール」の本店。
百貨店での販売や通販もあるが、靴を脱いで上がれる空間で眠りやくつろぎの衣を選ぶと、それだけで心身が癒やされるよう。
更年期には恩恵しかない
コロナ自粛期間中は出かけることも人と会うことも減って、 「不安が多い生活の助けになればと、『ナナデェコール』のサイトで記事をアップしていました。でも、世の中の状況が落ち着いてきても、なーんか気分が上がらなくてどうしようかなと戸惑いました。やる気満々にならないんですよね。でも、その低迷した気分と体調がつながっていることや、多くの人に会うことがすべてではないこと、また、逆に家でゆっくりすることのよさも実感しました」
恵実さんは、コロナ自粛中にできた時間で、改めて長年続けていたマインドフルネスを学び直した。集中的なプログラムを2年かけて受講したのだ。
「マインドフルネスを深めると、心の安らぎ、癒やしを自分の中にみつけられるんです。私を含めた感情の起伏がある世代の人たちにとって、これはすごく大きな助けになるんじゃないかな。とくに日本って、すごく見えないストレスが多いから」
更年期を意識したことがなかった恵実さんは、期せずしてコロナ自粛のタイミングで更年期を乗りこえる術を学んだようだ。
「仕事をはじめ、親のこと、子どものこと、パートナーとのことなど、年々、責任の領域が広がって、それが続けざまにあったり、重なったりが多い世代だから、心のあり方を学んでおくと、精神的なピンチがやってきたときに乗り越えられると思います。日頃から静かな時間を持つと、自分の中にくつろぎの場所をみつけられる。するとどこでも目を閉じるだけで、落ち着いて自分の中のくつろぎとアクセスできるようになりますよ」
思考のデトックスによって、ゆとりができると、大切なことに集中し味わうことができる。それは精神の健康につながる。
「料理を薄味にするほど、素材そのものの味がよくわかるのと似ているんですよ。体にもいいし」
たしかに、やさしい味というのは、単に刺激が少ない薄味というのではない。本来の素材の持ち味がじわーっと五臓六腑に沁みわたることだ。慣れないと物足りなさを感じるかもしれないが、濃い味付けで素材を覆い隠してしまうと、素材そのもののよさや自分の体が切実に求めているものと出合えなくなってしまう。
それを心に置き換えると、あれこれ忙しさにかまけたり、刺激的な気晴らしで自分の心の大切なものを覆い隠してばかりいると、まさに心を亡くす状態になる。
自分の中にくつろぎの場所を見いだすことは、前述した自分の心の声を聞くことに通じる。
「アフターコロナの今、変化がめまぐるしい。だからこそ、地に足をつけていたい。いまこの瞬間をありがたいと思えたり、最高だなと感じたり。そんな日常のなかにある幸せをすくい取れたら」と恵実さん。
安心して眠れるためのスケジュール
仕事柄、人の悩みを聞くことも多い恵実さん。
「若年性更年期の症状を訴える人は多いです。真面目すぎると体も心も窮屈になります。そんなにがんばらなくてもいいのに……」
恵実さん自身も、かつては徹夜も平気で働いていた。そして仕事の区切りには、温泉やマッサージに行って、乗り切っていた。
「仕事仲間とはどこのスパがいいとか、そんな話ばかりしていましたね。肌荒れ、生理不順、偏頭痛、慢性疲労……。体調が悪いのがデフォルトだと思っていたくらい」
しかし、オーガニックコットンのパジャマに包まれて眠ることを知ってからは、めったにマッサージに行く必要がなくなった。 「月に一度のご褒美スパも卒業して、早く家に帰ってパジャマに包まれたいと思うようになりました。『ああ、気持ちいい』という幸せな安心感で眠る楽しみを知りました」
マッサージと違って、睡眠は自分の内側から肉体をほぐしていく癒やし。いまでは、安心して眠るためのスケジュールを立てている。
「もちろん忙しいときもありますが、そういうときこそ、ちゃんと睡眠が取れるように、何時には寝るから、何時までにはこれを終わらせるなど、スケジュールを立てます。それから、例えば、1月は疲れやすいから、なるべく長く寝る。年単位でも考えていますよ」
この記事を書いた人
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