カテゴリー

人気タグ

大人のおしゃれ手帖 1月号

大人のおしゃれ手帖

最新号&付録

大人のおしゃれ手帖
2025年1月号

2024年12月6日(金)発売
特別価格:1420円(税込)
表紙の人:原田知世さん

2025年1月号

閉じる

記事公開日

この記事の
関連キーワード

大人のおしゃれ手帖
の記事をシェア!

「大人のための絵本」vol.18 モデル・アンヌさんの名作選 
言葉って面白い

アンヌ

この記事の画像一覧を見る(2枚)

「大丈夫です」の真意は?

こんにちは、アンヌです。
「転石苔を生ぜず(てんせきこけをしょうぜず)」(*「転石苔むさず」とも言う)という諺がありますね。
この諺、ヨーロッパでも同じものがあり、基本的には意味は日本語と同じ。「転々としていたら富を築けない」という忍耐の教えです。でも開拓者の国アメリカでは、苔を古臭いものと捉えて、「活発に動いていないと錆びてゆく」といった逆の意味に。フランスでも、どう解釈するかの議論があったのを覚えています。
 同じ言葉でも、誰が、いつ、どういう気持ちで使うかによって、意味がまったく違ってくる。
 先日のスタバでのことを思い出しました。
 注文の時の会話です。「コーヒーはマグカップでもよろしいですか?」と聞かれました。「大丈夫です」と私。「構いません」という意図が、通じたようでした。
 次の「ミルクは豆乳などに変えられますが?」にも「大丈夫です」と。これは「ミルクのままで良いです」の簡略です。
 「お砂糖などはあちらにあります」と示されたときも「大丈夫です」。「必要ありません」を柔らかい言い方にしたつもりで。
 さて。私は右手にマグカップを携え、席に座ってパソコンに向かっていました。
 ふいに店員さんから声をかけられます。見上げると、小さな紙カップがずらりトレーに。
 「新発売の豆乳で作ったチャイティーラテです」と笑顔。美味しそうな香りが漂い、「アレルギー、大丈夫でしたらどうぞ」と勧められました。
 豆乳のアレルギーはない。これはひとついただいておこう。
 そこで、私は元気よく「だいじょぶでーす!」と答えました。
 この「大丈夫」という日本語。思いやりに満ちた響きがあり、使い勝手が良い。それでつい乱用をしたのが失敗でした。
 店員さんはカップを差し出すのではなく、くるりと私に背を向けて、あっという間に行ってしまったのです。きっと「結構です」と解釈したのでしょう。離れていく豆乳チャイティーラテを、今さら「ください」とは叫べません。
そうとなると、なんだか余計に欲しくなり、私は急いで家へ。
 台所でシナモン、ベルガモット、クローブなどを潰し、アッサムティーと混ぜて、豆乳で数分。とびきりの豆乳チャイティーラテを作りましたけれどね。
「転石~」も「大丈夫」も、さまざまな顔がある。
今回は新年度に向けて、言葉の面白さを楽しむ絵本2冊を選びました。世界が広がりますよう。

*次ページでは、アンヌさんのおすすめの2冊を紹介します

この記事のキーワード

この記事を書いた人

モデル、絵本ソムリエアンヌ

14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒業。 モデルのほかエッセイやコラムの執筆などで活躍。 最近は地域で絵本の読み聞かせ活動も行っている。

執筆記事一覧

記事一覧へ戻る

大人のおしゃれ手帖の記事をシェア!

関連記事