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大人のおしゃれ手帖 11月号

大人のおしゃれ手帖

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大人のおしゃれ手帖
2025年11月号

2025年10月7日(火)発売
特別価格:1640円(税込)
表紙の人:天海祐希さん

2025年11月号

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「大人のための絵本」 モデル・アンヌさんの名作選 
 これからのおしゃれ
~『ファッションマジック』『ヨセフのだいじなコート』~ vol.37

アンヌ

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女性像はもっと自由でいい

 こんにちは。アンヌです。
 先月の世界陸上。テレビ中継を追いながら、アスリートたちの超人的なパフォーマンスに大興奮しました。さらにおしゃれにも!
 スポーツはファッションの対極にあると思っていた、80年代後半のソウルオリンピック。フローレンス・ジョイナー(*1)の登場が記憶に鮮明に残っています。朴訥(ぼくとつ)とした雰囲気の選手たちの中で、美しいメイクと長く垂らした髪!奇抜なネイルは見たこともない長さ! それで走れるの? しかし心配もよそに見事、三冠を獲得。常識を覆されました。
 時代は変わり、今日、選手たちはファッション界からも注目を浴びるほどに個々におしゃれを楽しんでいます。世界陸上でも、オリジナリティあふれる美しく彩られたネイルはもちろん、国旗カラーやパールを盛ったメイクが目立ちました。髪型は、ベリーショートから超ロングまで。カラーリングも結い方もいろいろ。大きなピアスやウィッグも妨げになりません。ウェアのように纏った全身タトゥーも!
 わずかな差を競り合うアスリートたち。見た目でも差をつけることで、より一層自分を奮い立たせ、パフォーマンスを上げていくのでしょう。ルッキズム(*2)を逆手に取るような姿が勇ましく映りました。
 彼女たちを見ていたら、ふと私がパリコレクションに出演していた20代後半頃と重なりました。一日に何本ものオーディションをまわり、その先々で一回り年下のモデルたちと一緒に順番を待つのです。負けたくない。一本でもショーの出演を勝ち取ろうと踏ん張っていました。そのためには、唯一無二の女性像を自分のなかにつくらなければ。そこで私が目を向けイメージトレーニングをした女性たちは――。ボッティチェッリ、クリムト、エゴン・シーレ、喜多川歌麿が描く女性たち。マン・レイやサラ・ムーンの写真に写る女性たちにも。映画では、『ヴェニスに死す』(L・ヴィスコンティ監督)のシルヴァーナ・マンガーノ、『ノスタルジア』(A・タルコフスキー監督)のドミツィアーナ・ジョルダーノ、『情事』(M・アントニオーニ監督)のモニカ・ヴィッティ。小津安二郎監督作品の原節子。『風と共に去りぬ』の「スカーレット」。歌手のパティ・スミスやニーナ・シモン。作家のマルグリット・デュラス。多才なジェーン・バーキン。モデルのワリス・ディリー。女優のサラ・ベルナール、オードリー・ヘップバーン、ティルダ・スウィントン……。ルーブル美術館にある彫刻『サモトラケのニケ』! ざっと挙げるだけでもスタイルは多様です。
 今、世界には39億ほどの女性がいます。体の大きさ、手足の長さ、髪質や色、鼻や目の形、皮膚の色、体質など、ひとつとして同じではありません。「小顔、美白、脱毛」キャンペーンから解放され、唯一無二の自分を抱きしめるべきだと強く思いました。私たちはもっと自由に違って良い。それが「おしゃれ」なのだから。
 今回は、いろいろなおしゃれの仕方の参考に、2冊。秋のコーディネートに向けて!

*1 アメリカの陸上選手。1959~1998。女子100m、200mの世界記録保持者。ソウルオリンピックでは100m、200m、400mリレーで三冠に。
*2 外見のみを重視したり容姿で人を判断する「外見至上主義」。

*次ページではアンヌさんのおすすめ2冊をご紹介します

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この記事を書いた人

モデル、絵本ソムリエ アンヌ

モデル、絵本ソムリエアンヌ

14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒業。
モデルのほかエッセイやコラムの執筆などで活躍。
最近は地域で絵本の読み聞かせ活動も行っている。

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