「大人のための絵本」 モデル・アンヌさんの名作選 応援賛歌の絵本
~『はじまりの日』『ビリーブ』~ vol.31
新しいスタートに
こんにちは。アンヌです。
毎年、4月になると思い出すのが、8年前。小2に上がる息子の初登校日です。
転校先の小学校までの通学路は、和やかな春の日差しで輝いていました。でも私たち母子は、不安でどんより。
1年生のときは、ミッション系の遠方の小学校に電車で通っていました。読書に没頭できた長い通学時間は楽しそうでした。しかし、いったん学校の門をくぐると、規律の厳しい学校らしく、先生方は子どもたちを注意するのに忙しいという印象。
2学期に入るころ、息子が泣いて帰ってくるように。早熟で幼いころからしゃべりが得意な息子。学校での「困りごと」を聞くと……。例えば、「さくらんぼ計算」と呼ばれる授業が苦痛だ、お友だちの面倒を見るのが負担だし、叱られるのも辛い、という内容。よくある「小1の壁」だろうと見守っていました。
また、図鑑が好きで、特に生き物の生態のめり込むと、たちまちダーウィンの進化論に関心を寄せた時期でもありました。けれどもその小学校では、「生き物はすべて、神様がお創りになった」という教え。息子の中で疑問が膨らみ、やがて大きな不満となっていきました。
秋も深まるころ、進化論を主張する息子と先生の間で衝突が。私は学校から呼び出されました。
お子さんの態度が心配だ。ご家庭内になにか問題があるのか。
そう質問されたので、家庭内というより、息子の学びのスピードが速いことが原因なのではないか。周囲に対しても敏感で、自分だけでなく他人が叱られるのもストレスなのでは。おごり、と捉えられても構わないと腹を括り、母としての見解を思い切って伝えました。そして解決策を見つけるため、先生の助言を待ったのです。
ところが、先生は両手を合わせます。「お祈りを」。耳に入ってくる言葉は「神様、お母様にどうか正しい道をお示しください」。面談終了。
小さな子どもが苦しんでいるというのに、これでいいのだろうか。
3学期に入り、息子はとうとう「学校に行きたくない」と訴えるように。こうなったら転校か。歩いて10分のところには立派な公立小があるではないか。
こんな経緯があった後の登校日でした。転校先の先生方に息子を託すと、私は落ち着かないまま家で帰りを待ちました。
お昼前になり家のドアが開きます。「ママ!」と力強い息子の声が。「今日、ぼく、一度も怒られなかった!」と誇らしげです。
翌日も、そのまた翌日も、「今日も怒られなかった」「今日もだよ」と。
沃土(よくど)にトマト。痩せた土地に葡萄。通学路にはコンクリートの割れ目から力強く芽を出すスミレやタンポポも。それぞれの育ちに適した環境があります。息子の読書量はめっきり減りました。でももう大丈夫。自信を持って進んでいけるよと抱きしめたのです。
年度始まりに、新しい環境に飛び込んでゆくのは、友人、家族、もしかすると自分かもしれません。今回は、それぞれが信じた道を応援する2冊です。
*次ページではアンヌさんのおすすめ2冊をご紹介します
この記事を書いた人
モデル、絵本ソムリエアンヌ
14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒業。
モデルのほかエッセイやコラムの執筆などで活躍。
最近は地域で絵本の読み聞かせ活動も行っている。
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