「大人のための絵本」vol.25 モデル・アンヌさんの名作選
読書の秋に
やっぱり、本はあるほうが
こんにちは。アンヌです。
暑さが和らぎ、落ち着いて読書ができる季節になりましたね。
デジタル時代になっても、私の家は本だらけです。絵本に興じてからはさらに増え、ついに廊下にもあふれるように。どう片付けようか案じているところに、築70年の山荘の改装工事にあたり"祖父の古い本棚"問題が浮上しました。
「祖父が亡くなって以来、手付かずだがどうするか」というものです。
天井まで届くその本棚には、戦前の哲学書がぎっしり。言葉は古く内容も難解なので、親戚中でも引き取り手がいません。
そこで古書買取を行う身近なチェーン店を調べました。でも古書は買い取ってもらえません。では、神田あたりの古本専門店に持って行くか、ネットオークションに出すか。しかし二束三文は仕方がないとしても、売却までの時間がかかりそう。ダンボールに詰めたり、郵送したりの労力も考えると、なかなか踏み切れません。そもそも知識の詰まった書物を安易に手放していいものだろうか。悩みすぎた私は、本が攻め寄る悪夢までみてしまいました。
もう資源ゴミに、えいっだ!
意を決したところに、建築関係の方が山荘の視察に訪れました。すると問題の本棚を見て、「おお!」と声を上げるのです。そして一冊、また一冊と引っ張り出して、長い時間目を通していました。
この方の手に渡れば、きっと本も祖父も喜ぶに違いない。
「よかったらお持ちください。うちは誰も読みませんから」。
私が伝えると、そうですかと嬉しそう。これでやっと私も祖父の古書から解放される。
しかし安堵したのも束の間でした。
「やはりこのままお祖父様の本棚として取っておかれたほうが」。
こう言い残して帰られてしまいました。
片付けの道のりは遠い。
そんな思いで迎えた初秋。本離れの新聞記事が目に留まりました。人々が長文を読まなくなり、関心のあることや必要な情報だけをスマホの短文から得る傾向にあるという話でした。「断捨離」「タイパ」「コスパ」など、効率のよさが評価されるこの頃ですが、本当にそれがいいのか。何気なく「余計な本」を手に取り、費やす「無駄な時間」。それこそが、自分を未知の場所に誘う豊かさの象徴ではないかとも思うのです。やっぱり、廊下にあふれた絵本も祖父の古書も、あったほうがいいかもな。
というわけで、今回は本の素晴らしさにふれる作品を2冊。ぜひ、紙のページをめくって、ゆとりの時間を楽しんで!
*次ページではアンヌさんのおすすめ2冊をご紹介します
この記事を書いた人
モデル、絵本ソムリエアンヌ
14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒業。 モデルのほかエッセイやコラムの執筆などで活躍。 最近は地域で絵本の読み聞かせ活動も行っている。