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大人のおしゃれ手帖 7月号

大人のおしゃれ手帖

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大人のおしゃれ手帖
2026年7月号

2026年6月5日(金)発売
特別価格:1720円(税込) 
表紙の人:中谷美紀さん

2026年7月号

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「大人のための絵本」 モデル・アンヌさんの名作選 
暮らしと温暖化 ~『わたしたちの家が火事です 地球を救おうとよびかけるグレタ・トゥーンベリ』 『ツバル』~vol.45

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ココナツミルクカマンベールチーズ

 6月といえば雨の季節。しかし近年の気候の変化を思うと、今回はあえて晴天の話をしたいと思います。
私は幼い頃から、オリーブとカマンベールチーズが大好物でした。どちらも今ではワインのおつまみの定番として知られていますが、当時の私は、家族に見つからないようこっそり盗み食いをしては叱られていたものです。そう考えると、のちにワイン・エキスパートを取得したのは、ある意味で宿命だったのかもしれません。
 そのカマンベールの故郷といえば、フランス・ノルマンディー地方。フランス有数の酪農地帯で、訪れるたびに市場でほどよく熟したものを見つけては買い求め、一日でぺろりと平らげてしまいます。ところが最近、その大好きな味をいつまで楽しめるのだろう、と不安がよぎるようになりました。理由は、気温の上昇です。
 先日、フランスのニュース番組を見ていると、気象専門家が深刻な表情で温暖化への警鐘を鳴らしていました。先月、パリでは35度という例年にはない熱波に見舞われたそうです。専門家によれば、10年後、20年後には、パリの猛暑日の日数が現在の南フランス並みになる可能性が高いとのこと。さらに2050年頃には、地域によっては五十度に達するかもしれないと語っていました。
 農産物への影響や害虫被害の増加など、さまざまな変化が急速に進むことは想像できます。しかし私の心をざわつかせたのは、その先に続いた話題でした。
 それは、バカロレア対策について。
 9月始まりのフランスでは、大学入学資格試験であるバカロレアは、日本のように冬ではなく、この6月に行われます。私自身も経験がありますが、窓を開け放ち、爽やかな風が教室を通り抜けるなかで受けたという記憶は今でも鮮明です。その心地よい空気のおかげか、もちろん緊張はしていましたが、不思議と前向きな気持ちで集中できたことを覚えています。
しかし、今後さらに気温が上がるとなると話は変わります。窓を開けば暑く、快適な環境を保てない。試験会場がサウナのようにならぬよう対策が必要だと言っていました。日本ほど冷房設備が普及していないフランス。ふとパリに住む母のことが心配に。冷房のない家で、大丈夫なのだろうかと。
 慌ててメッセージを送ると、ちょうどノルマンディーの家の方に滞在しているとのこと。胸をなで下ろしました。
 少し前までのノルマンディーは、夏でも肌寒く、海が近くても泳ぐには冷たすぎました。そのため、バカンス先としては南フランスほど人気がなかったのです。ところが近年は、暑くなりすぎた南仏を避ける人が増え、少しずつ注目を集めるように。
 ノルマンディーの家の隣には牧草地が広がっていて、牛たちがのんびりと草を食んでいます。その風景を眺めながら、以前、義父がぽつりと言った言葉を思い出しました。
「2050年頃には、ここもココヤシのプランテーションになっているかもしれないな」。
 冗談とも本気ともつかない一言でしたが、今となっては笑ってばかりもいられません。
もし本当にそうなったら、カマンベールはココナツミルクを原料に作られるようになるのかも。さて、そのときは、どんなワインを合わせようかしら。

*次ページではアンヌさんのおすすめ2冊をご紹介します

この記事を書いた人

モデル、絵本ソムリエ

14歳で渡仏、パリ第8大学映画科卒業。
モデルのほかエッセイやコラムの執筆などで活躍。
最近は地域で絵本の読み聞かせ活動も行っている。

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